局所荷重を受ける腹板

  新しく橋を作るとき、橋桁はどうやっ て架ければよいでしょう。
  一番単純な方法は、右奥の図のように、河原に台(足場)を組み、工場で作った桁の“部品”をクレーン車でその足場に次々と乗 せていく、というものです。

  橋桁は通常結構な大きさがあるので、工場では、桁を細かく分けた状態の “部品”に相当するものを作り、現場でそれを組み立てるのが普通です。

  この方法は、もっとも簡単な上、工事中の桁には無理な力がほとんどかからず、また、桁の下には台があるので、安全性にも優れています。もち ろん、工費も安く済みます。
  しかし、世の中、いつもいつもそう簡単に行くとは限りません。例えば、鉄道線路や他の道路の上を立体交差でまたぐ橋を作ろうとした場合、下 にある線路や道路を止めて、工事用の足場を作ることができるでしょうか。こんな時は、足場の上に桁を乗せていく、といった、単純な方法では、橋桁を架ける ことはできません。さあ、どうしましょう。

  このように、工事用の足場を作ることができないような場合の橋桁の架け方の一つに、「送り出し工法」というものがありま す。この方法では、橋桁を架けようとする場合、上中央の図のように事前に別の場所(通常は橋を架ける場所のすぐ横)で桁を組み立ててしま い、できあがった橋桁を、架設場所に“そろりそろり”と押し出して行くのです。
  この方法は、橋の下の部分の空間を工事のために使う必要はありません。そのため、橋(立体交差の高架ももちろん橋の一種です)の下の部分が いろいろな目的で使われている都市部での工事などに活用されています。
  しかし、この方法を使った場合、橋桁には、無理な力がいろいろかかります。特に問題になるのが、この方法では、工事中、「本来橋桁を支える べきところ」以外の部分で橋桁を支える必要がでてくることです。
  実は、橋桁を支える支点の部分は、橋の中でももっとも力がかかる所で、その部分は、座屈防 止のため、かなり補強されているのが普通です。ところが、この方法で橋桁を架けると何も補強されていない部分で桁を支える必要がでてくるのです。

  このような、本来なら支点にははならない部分で支えられる橋桁の強度を検討し、その設計の方法を考えるのが、この研究の テーマです。

  写真は、この研究の一環として実施した実験の結果です。この写真では、橋桁は上下逆さまに置かれています。支点ではない ところに無理な力がかかると、橋桁は、左の写真のように、見事に壊れていますね。

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