座屈とは

  細長いプラスチックの物差しを思い浮かべてください。
  まず、その物差しを両手で引張ってみましょう。ちょっとやそっとの 力では、物差しは壊れませんね。
  では、次に、その物差しを両側から押してみてください。どうですか? 今度は、物差しは写真のようにすぐ曲がってしまい、さらに力を 入れると、簡単に折れてしまいます。
  このように、細長い物体は、引張ったときにはその材料の 強度いっぱいまで耐えることができますが、圧縮したときには、 材料本来の強度よりもはるかに小さな力で折れてしまうのです。 この現象を、座屈と呼んでいます。

  この座屈強度は、材料の強度とは無関係に、 純粋に幾何学的な条件だけで決まることがわかっています。 つまり、棒なら細長いもの、板なら薄いものが、座屈をおこし易い、ということです。 このことが、座屈が鋼構造物で問題になっている理由の一つです。

  昔はあまり良い材料がなかったので、橋でも、建物でも、 結構ごつい作りに(棒なら太く、板なら厚く)なっていました。 材料が良くなかったので、ごつい作りにしないと持たなかったのです。
  しかし、近年、良い材料が次々と開発され、同じ鉄でも、 強度的に優れたものが使われるようになってきました。 そのため、以前に比べ、相当にスリムな構造物ができるようになったのです。
  ところが、上で説明した通り、座屈強度は材料の強度とは無関係に、 スリムなものほど起こり易い、という性質を持っています。 その結果、鋼構造物は、昔に比べ、座屈が起こり易くなっている、というわけです。 これが、近年、鋼構造物で座屈が問題となる理由です。

  座屈は、いわば技術の進歩によってクローズアップされるようになった問題、 といえるでしょう。

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