近年、景観という言葉をよく耳にします。高度成長時代のような、質よ
り量、あるいは機能一辺倒ではなく、何がしかの“ゆと
り”が、橋を初めとする土木構造物にも求められるようになってきたのです。

そんなわけで、最近では、新しく橋を作る際にも、必ずと言っていいほど「景観設計」を実施しています。
この景観設計では、その場所にはどんな形の橋がふさわしいか、橋の装飾はどうしようか、などといったことを検討しています。その結果、以前
は全国どこに行ってもにたような形の橋しかなかったところ、最近では、各地に、特色のある橋がたくさん現れています。
しかし、だからといって、この写真のような橋はどうでしょう。
この写真は、北陸地方のある町にある、小規模な斜張橋です。この橋では、地元に伝わるものをデザインした、として、何と、斜張橋のタワーを
こんな形にしてしまったのです。いくら、その土地の特徴を出したといっても、これでは、行き過ぎですね。
そう。最近は、この「景観」という言葉が一人歩きを始め、とにかく変わったデザインにすればいいのだ、というおかしな景観設計がしばしば見
受けられるようになっています。
そうかと思うと、橋本体は、何の変哲もないタイプにして出きる限り安く作っておいて、そこに変な飾りをゴテゴテとつけた上で「景観設計をし
ました」などというケースもあります。
もちろん、ここで挙げたような「景観設計」が、すべてまずい、と言っているわけではありません。ケースバイケースでしょう。しかし、安易に奇をてらったも
のは、真の「景観設計」とは言えないと、私たちは考えます。
われわれ橋梁研究室では、単なる表面上の装飾に頼るのではなく、橋梁本体の「形状美」をどのように評価したらよいかを考
える研究をしています。
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